日陰の二次創作小説サイト。DOLLSで気ままに稼動中。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
御子柴受けアンソロジーpyrite様に投稿させて頂いていたお話のうちの一つです。
あちらのサイトが先月で公開終了となりましたので、作家個人での掲載となりました。
全二作ですので、後日2個目のお話をUP致します(●´ω`●)
先ず1個目のお話…『CHERRY BOY☆PANIC』(・∀・)
2個目に投稿したお話が余りにもシリアスだったので、こちらは完全コメディーにしてみました☆最初から最後まで悪乗りしかしてません(笑)
タイトルの通り、笑太をあえて可愛めな感じで表現しています(当社比w)
まさしく…嗚呼、青春!
甘酸っぱい印象の話にしたかったので、
楽しみながら気楽にお読み頂ければと思います(´▽`)
あちらのサイトが先月で公開終了となりましたので、作家個人での掲載となりました。
全二作ですので、後日2個目のお話をUP致します(●´ω`●)
先ず1個目のお話…『CHERRY BOY☆PANIC』(・∀・)
2個目に投稿したお話が余りにもシリアスだったので、こちらは完全コメディーにしてみました☆最初から最後まで悪乗りしかしてません(笑)
タイトルの通り、笑太をあえて可愛めな感じで表現しています(当社比w)
まさしく…嗚呼、青春!
甘酸っぱい印象の話にしたかったので、
楽しみながら気楽にお読み頂ければと思います(´▽`)
調査報告書・・・
報告者 御子柴笑太
東都第三帝国
法務省 特別死刑執行刑務官部隊 第一部隊所属
思い返せば…
特刑に入ってからの俺の不幸の元凶は、アイツなんだと思う。
全てが終わってから気付いた事。
そう…後悔先に立たず。まさにソレだ。
■ CHERRY BOY☆PANIC ■
×月11日 月曜日 時刻:0205
「――なっ?この通り!御願い!ホント頼むよ!!」
「…た、頼むって言われても……」
ひたすら俺に泣きついてくる男。
諜報課、柏原謙信。
夜間任務の呼び出しを受け、撤収後に唐突に言われた言葉だった。
「マジで!俺を助けると思ってさ。その女の子にスゲー頼まれてんだよ~ッ!!」
「頼まれたって…。俺には関係無いだろう?」
「関係大アリだよ!だって、あの総隊長と同じ部隊!仲も良い!」
これで関係無いって酷くなーい?…などとほざき出す。
女と『関係無い』の意味なんだが…。
そう心の中で呟く。
「たださ。ちょ~っとだけ、総隊長の事調べてくれるだけでいいからさっ」
「…調べる…」
「そそ。好きな奴居るのかーとか。普段の行動はどうなのかーとか。」
「普段の、行動…」
「うんうん!普段こんな癖が有る~とかさっ」
普段と言われて思いつくのは。
到底、口が裂けても他人には言えないような事ばかりだ。
それを言えというのか?
「…ぁ…ぃゃ…俺…普段とかはよく、知らねーし……」
「じゃあじゃあ!好きな奴居るのか。好みのタイプは~とか。それでいいからさ!」
「…はぁ…」
背後のドアを振り返る。
時生も帰ったし…正直、俺も帰りたい。
つーか、この場から逃げたい。
「マジで頼むよぉお!!じゃないと俺、仕事出来ないぃーッ!!」
俺の隊服に必死に縋り付いてくる男。
捨てられた子犬のような姿に、無意識に溜息が出た。
「…~~っ……解った。解ったよ…だから離せ。」
「ほぁッ!…マジィッ!?あああぁありがとぉぉぉお~!!」
「あー解ったから…。離 れ ろっ て…。うわ!隊服で鼻をかむなーッ!」
「あぁぁ~救世主様ぁぁぁ~ッ」
「…だ か ら 離せってーッ!」
…そんな訳で――。
俺の前途多難な 『時生観察生活』 が、華々しくも幕を開けた。
×月12日 火曜日 時刻:1625
「…笑太!伏せろッ!」
「…ッ!」
咄嗟に膝を折ると、先程まで頭の有った位置へ金属片が飛んで来た。
コンクリートに弾かれるコンバットナイフ。
「うげ~あっぶねぇー!笑太気を付けてよ~」
「…、…悪ぃ…。」
ちょっと考え事をしていた…何て言える筈もなく…。
俺の横に来た時生が、跪いた俺に手を差し伸べてきた。
「…体、しんどいの?後は俺やるよ~?」
微笑むアイツの顔。
穏やかに細められる瞳。男然とした精悍な顔つき。
「……。」
「…?…笑太?」
「…っ…あ。いや、大丈夫だ。悪い。」
伸べられた手を断り立ち上がる。
靴底の砂利が乾いた音を立てた。
その様子を無言で見詰めていたアイツが、突然声を上げる。
「よし解った!」
「は?…な、何が?」
脈絡のない突然の発言。
コイツの癖の一つだ。
思わず聞き返す俺を見て、時生はニコリと微笑みを返した。
「 ""こちら総隊長。車内本部どうぞー。"" 」
「ッ!?……ア、アンタ!何をする気だ。俺はッ…」
慌てて通信を始めた時生の腕を掴む。
するとアイツは、宥めるように俺の頭をふわりと撫でた。
「…ッ!…お、おい!」
「 ""……あぁ。うんそう、チェンジで。…っんなの解ってるよ!あぁ宜しく。"" 」
通信を終え、必死に隊服を握る俺を見て穏やかに苦笑する。
「…俺は動ける!大丈夫だって言ってるだろッ!」
「……解ってるよ…」
「――それならッ!」
「…でもね…。笑太が気もそぞろ状態では、俺は援護しきれない。」
「…ッ!……」
注意力散漫な今日の俺。
コイツは、最初から気付いていたんだ…。
「そんな訳で~笑太は俺の援護に回ってもらえるかな?」
そう言って、優しく微笑んだ。
「…ッ……わ、かった…。すまない…」
自己嫌悪と悔しさに口唇を噛み締める。
アイツの隊服を掴んでいた事を思い出し、静かに手を外した。
俺が俯いているのでアイツの顔はよく見えないが、雰囲気でアイツが笑っている気がした。
大きな手の平が、ポンポンと俺の頭を叩く。
子どもにするような仕草に再び悔しさが込み上げた。
「…っ…」
変に優しい所。
俺に甘過ぎる所。
「じゃあ~行こっかッ」
マイペースな所。
でも、寂しがり屋な所。
キレると残酷なまでに好戦的な所。
一般的ルールには縛られない癖に、仕事は徹底している所。
自分から檻に入るライオンみたいな奴。
それが…俺が見るいつもの桜澤時生だ。
じゃあ――
女が見るアイツの姿は?
×月13日 水曜日 時刻:1312
任務の打ち合わせを終え、昼食を摂る為に食堂へ向かう。
すると、廊下の一角に長い金髪が見えた。
――時生だ。
アイツは、一点を凝視しながら何やら真剣な面持ちで悩んでいるようだった。
普段余り見る事のない、眉間の深い皺。
何をそんなに?と思いその視線を辿ると…
ジュースの自動販売機。
「……っ…」
…そ、そんな事で…。
出そうになる溜息をグッと堪える。
俺が見掛けてから数分経った頃、
アイツは、ようやく握り締めていた小銭を自販機へと入れた。
ボタンを押し、ジュースが転がり出る。
手に取った物は…オレンジジュースだった。
…解ってたけど…解ってたけど…マジで頭悪いなアンタ…。
悩んだ結果がソレかよ。と、頭を抱えてその場に座り込みそうになる。
それもグッと堪え、再び視線を戻した。
いつの間にか煙草に火を付け、近くの壁に寄り掛かっているアイツ。
美味そうに紫煙を吐き出した。
何処か遠くを見詰めるような、先の視えない銀灰色の瞳。
普段、俺の前に居る時はクルクル変わるその表情も、
今は動く事なく仮面のように虚ろな表情で窓の外を眺めていた。
口唇に宛てた煙草から、か細い煙が立ち昇る。
「桜澤総隊長~っ」
静寂を壊す女の声。
制服からして、総務課かどこかの事務員のようだ。
それに気付いたアイツは、ふわりと流れる仕草で振り返る。
無表情のまま応対するのかと思いきや、よく見ると口元に微笑み。
瞳は硝子玉のように光り、薄い口唇が淡い弧を描く。
視線は相手を捉えていながら、そこに存在を認めていないような…
――空っぽな笑顔。
俺に対してのとは明らかに違う。
今迄感じた事のない違和感を感じる。
でも、この笑い方――以前、何処かで見たような…?
「………」
答えの出ない疑問を収め、現実に意識を戻すと…
女は、頬を染めつつ嬉しそうにアイツと話していた。
それに対して時生は、書類を受け取りながら時折わざとらしく瞳を細める。
さも優しげに、さも愛しげに…。
「…、…」
金髪に翳る切れ長の瞳。
色素の薄い長い睫毛。
整った鼻梁。彫りの深い男らしい顔立ち。
戦闘に身を置く者特有の屈強な筋肉が、スラリとした長身を鮮やかに引き立てる。
確かに外見は悪くない。
性格も、まぁ…見ようによっては爽やか?だし…。
それに加えて
特刑全48部隊の『頂点』に君臨し続ける男だ。
――そりゃ…モテない筈が無い、か。
×月14日 木曜日 時刻:2145
夜間任務出立前。
トイレで用を足し手を洗う。
指が痺れる程の冷たい水が、緊張と興奮で散在した心を沈めてくれた。
備え付けの鏡を見る。
投影されたもう一人の自分を見詰めた。
俺の瞳。
光無く澱む、暗い青。
アイツは…銀灰、だったか…。
――頭を過ぎる 硝子玉の瞳。空虚な微笑み。
それでも…
あの女はとても嬉しそうだった。
あんな笑顔をする男で、女は満足なのか?
顔?
身体?
金?
地位と名誉?
それらが、女達が求める時生への理想の姿?
「…、…」
――解らない……。
小さく溜息を零すと、視界の端を白い物が掠めた。
「お。笑太じゃ~んっ」
独特の媚びを含んだような…甘く響く低音。
これから任務を共にする男。桜澤時生だった。
鏡越しに見詰める俺の背後を通り抜ける。
「笑太もトイレかぁ~?任務前はちゃんと済ましとかないとね~」
独り言のように呟き、長い髪を靡かせてトイレへと向かって行った。
そんなアイツを見送りながら、持っていたハンカチで素早く手を拭う。
そして、便器の前でズボンに手を掛けているアイツに声を掛けた。
「……先に、行ってる。」
「っ!」
すると、アイツは慌てたように…
「えッちょっと待っててよぉ~俺ハンカチ持ってないし~」
尖らせた口唇。
母親を引き止める子どものように駄々を捏ねる。
小学生かアンタは…いや、今時小学生でもそんな事は言わないか。
ハンカチくらい自分で何とかしろよ。
つーか、外で拭いてもいいだろう…。
「…、…」
一つ息を吐き出し、扉の取っ手を掴んでいた手を下ろす。
俺の所作に了解を得たとみたのか、アイツは無邪気な笑顔を浮かべた。
再びズボンのジッパーを下ろし始める。
沈黙の中、チリチリと金属の擦れる音が響いた。
「……」
「……」
余りにも静か過ぎる空間に、何となく居心地が悪い。
壁に寄り掛かる体の位置を変えてみた。
「…どうしたのぉ~笑太?」
「……別に。」
「んん~?もしや俺の…『デザートイーグル』でも見たくなったぁ?」
「…デッ!?」
あえて逸らしていた筈の視線を向ける。
アイツは挑発的な笑みを浮かべ、俺を見詰めていた。
「…バ、バカかアンタッ!!」
「…ふふっ…笑太溜まってるんでしょう?任務終わったらエッチしよっか~」
俺の罵声などまるで聞いていないとでも言うように、笑みを深くする。
アイツの銀の瞳が嬉々として輝いていた。
その姿を見て
ふと、先程考えていた虚ろな微笑みを思い出す。
――あ。そっか…
あの空っぽの笑顔は 俺が第一部隊に入ったばかりの――。
記憶と疑問が合致する。
ちょっとスッキリした感じがするが、現実のアイツは尚も言葉を続けた。
「前にヤったのが結構前だもんね~久々にヤろうよぉ~っ」
懲りない俺のセクハラ上司。
こんな奴を好きになるなんて、 ゼ ッ タ イ 俺には理解出来ないッ!!
「…っんの……バッカヤロォォォオオッ!!」
「うぎゃ!!」
無防備なアイツのスネを蹴り飛ばし、勢い良くその場を後にした。
――やっぱりあんな奴…好きになるなんて理解できないッ!!
×月15日 金曜日 時刻:0123
「アンタ……湿布臭い…」
トイレでのセクハラの後。
任務完了した俺達は、控え室で報告書を作成していた。
「酷いよ~! 元はと言えば、笑太が蹴るからでしょお~」
「…元はと言えば、アンタが馬鹿な事を言うからだ。」
「う、うぅっ…」
しくしくと泣きながらパソコンを打つ時生。
白い隊服を纏った背中が、小さく小さくなっていく。
デカイ図体した大人が身体を丸めて泣く姿は、情けない事この上ない。
ホント…普通にしてればマトモなのにな……。
逞しく浮き上がった肩甲骨。広い肩幅。
内面とは全く正反対の後姿を見ながら、ふと柏原の言葉を思い出す。
『…女の子にスゲー頼まれてんだよ~ッ!!』
『…好きな奴居るのかーとか。』
「……」
アイツの好きな奴、か…。
――考えた事無かったな……
「しょ~たぁ~。手ぇ止まってるよ~」
「…ッ!?」
不意打ちの言葉に思わず身体がビクつく。
「…ぁ…わ、悪い…。」
「ぅんにゃ、いいよぉ~。こんな時間だもんねぇ~」
…とか言いながら、詮索する視線を感じる。
何となく顔を向ける事が出来なかった。
ジリジリとする頬を擦り、再び手元の書類へと目を向ける。
「……」
「……」
――いっその事 聞いてしまえばいいのか?
柏原から明確に口止めされている訳でもない。
アイツに秘密にしたい訳でもない。
でも――何故か躊躇われる。
知られたくない。聞きたくない。
それでも、考え始めてしまうと無性に気になる。
――そんな…矛盾した感情。
「…、…」
手の中の書類が乾いた音を立てる。
アイツが打ち込んだ文字を見て、ふと我に返った。
何故こんなにも、俺は躊躇っているんだ?
何故、こんなにもアイツを――…
「………アンタ…」
「?」
ギシリと椅子が回転する。
俺の呼びかけに、時生がゆらりと髪を靡かせ振り向いた。
「な~に?笑太」
微笑んでいるだろうアイツに顔を向けられず、ただただ瞳が空を泳ぐ。
たかが頼まれ事を尋ねるだけなのに…。
「…ぁ…ぃゃ…あの……アンタ って、さ……」
「…俺?」
「ぁ、あぁ…。」
「…俺が…何?」
「…っ……す……好きな…奴とか、ぃるのかなって――…」
「………は?」
ポカーンと開かれた口。
予想だにしない言葉に、アイツの目が限界まで見開いた。
「…えと…ぁの…。」
固まったままのアイツに声を掛けてみる。
緊張やら羞恥、自己嫌悪…
その他色々の感情で、胸がはち切れそうだ。
もうどうでもいい。今すぐにでもこの部屋を飛び出したい!
「居ないよ。」
常より1トーン落とした声色。
俯いた視界の端で、アイツが足を組み替えるのが見えた。
「……そ、そっか。居ない、か…。」
「うん。居な~い。」
予想通りのような、予想外のような――。
何となく納得出来ない複雑な心境。
俺の心を知ってか知らずか、アイツはおもむろに椅子を立ち上がった。
「?」
「……。」
いつに無く真剣な表情で、俺を見下ろすアイツ。
何を考えてるのか解らない瞳が不気味さを増した。
顔を上げてアイツの表情を伺うと、底光りする真摯な瞳。
「…ッ」
身体が無意識に後退する。
解っていた筈の危機に、本能がアラームを鳴らした。
「……」
「…ア、ンタ…?」」
すると、
アイツは座ったままの俺を包み込むように抱き寄せた。
隊服の白が俺の視界を塗り潰す。
「…な、にすんだよッ!」
離せ。と、目の前の肩を押す。
アイツの…次に言うだろう言葉。
それがどうしても聞きたくなくて、絡む腕を剥がそうと必死でもがく。
「…離せ、よ!」
「えー。続き…聞きたくないのぉ~?」
「…っ…、…」
首筋をくすぐる金色の髪。
柔らかい口唇の感触が、追い掛けるように肌を滑る。
恐怖のような興奮のような感情に、屈むアイツの隊服を掴んだ。
時生の長い指が俺のネクタイに掛かる。
「…ッ…ぁ…」
「…俺が愛してるのは、お前だよ。」
「…ッ!…」
顎を取られ上を向かされる。
飛び込んで来た光る灰色に目が釘付けになった。
「しかしまぁ…いったい何を言うのかと思ったらさ~今更こんな事とはねぇ…。」
穏やかに煌く瞳の奥底に、微かに揺れる苦渋の影。
その影に、何故か感じる罪悪感が頭を擡げた。
Yシャツの隙間に潜り込んできたアイツの指が、胸の突起を撫で回す。
「…、……んっ…」
「何度も何度もヒトツになったのにさ。それだけじゃ…笑太は足りないの?」
お互いの鼻先が触れ合う。
視線を外す事を許されず、顎を掴まれたまま悲しげに曇る灰色を見詰め続けた。
「…くぅっ……ゃ、め…」
怖い。
――何が?
認めてしまうのが。
――何を?
…何をだろう…解らない。
でも
――凄く…怖い――…
「――お、俺はっ…柏、原にッ……!」
「柏…原?」
胸を愛撫する手が止まる。
瞬間、何かを思い出すように淡色の瞳が揺れた。
「…ははぁ~なるほどねぇ。今度は笑太かー。」
「は?…どういう意味だよ?」
くくっと喉の奥で笑うアイツ。
しかし、
その表情は笑顔とは程遠い、何かを策謀するような秘めた口元。
口唇が弧に歪む。
「その調査…どっかの女が、柏原に依頼したんだろ?」
「あ、あぁ…。」
「アイツは、その女と会う口実を取り付ける為、笑太に頼んだ…」
「し、知ってたのかッ?」
「知ってるも何も…いつもの事だも~ん。」
「い、つも…」
「そそ。でもその女は、俺のことが好きなんでしょう?無駄な努力だよねぇ~」
「……」
アハハと呆れ気味に笑うアイツ。
再び途方にくれる俺を見返すと、銀灰色の月の瞳が俺を射抜いた。
「俺はさ…。他の奴なんて興味無いしどうでもいい。」
「…っ…」
注がれる想い。
理解不能の恐怖が、再び心に大きな染みを作っていく。
「――でもね。笑太……」
言うな。
言うなよ。
「…俺は――…」
その先を…
――言うなッ!――…
「お前だけを愛してる。」
「……ッ!…」
耐え切れず見下ろすアイツの袖を掴んだ。
「…笑太じゃなきゃ勃たないよ…」
「…っ……、…変態…。」
「うわー酷ッ…」
近付く月の瞳。
優美に細められた目元が、クスクスと笑みを零した。
アイツの口唇が、優しく俺のそれを撫でる。
「…ッ……んっ、く…」
触れる程度の口唇とは対照的に、強引に入り込む舌。
ぐるりと口内を蹂躙すると、あっけなく移動し顎を辿る。
ぬめる感触に、身体が、肌が、うち震えた。
熱い吐息が抑えられない。
「…ん…ぁっ、は……んぅ…」
「…俺を…こんなにしといてさ…」
首筋を舐め上げ、柔らかく肌に吸い付く。
「ホントに酷いね…笑太は――…」
囁きながら、耳朶に舌を絡ませる。
その滴るような響きに…
「……と……きぉっ……」
――俺はただ、身体を捩じらせる事しか出来なかった。
×月15日 金曜日 時刻:0430
何処までも続く長い廊下。
暗い夜闇。
そんな中、一つだけドアの隙間を掻い潜り煌々とした光が漏れる部屋。
諜報課のとある一室…。
「…さってと~…次の任務候補はーっと…。」
背後に積まれた書類を確認する。
勢い良く立ち上がると、椅子が鈍い金属音を上げた。
それと同時になだれ落ちる紙。紙。紙…。
「あぁー。いい加減ココもかたさないとなー。」
手にした幾重もの書類の束。
得た情報を、パソコンに入れるのも面倒なほど。
ふと、
この書類の束って凶器になるんじゃないか?とか連想してみた。
「………恐ろしいな紙。」
「……ぁ…ぁぁあ…ッ!」
「ん?」
「…わぁぁあぁ…らぁあああああ…ッ!」
「何だぁ?」
床を揺るがす地響き。
書類がうず高く積まれた壁越しでも雄叫びが耳に届く。
「………か、怪 獣 ??……」
――って。
んな訳無いだろうけどさ~場所柄、ちゃんと確認しないとね…。
恐る恐る、ドアノブに手を掛ける。
「…柏ぁぁあ原ぁぁぁあああああああッ!!!!」
「ギャァアアアアッ!!!」
諜報課のドアの前。
突如として現れた怪物に、思わずその場に蹲る。
「…止めて殺さないでぇッ!…って――何だ。新人君か~良かったぁ…」
未知の生物かと思っていた奴は、
今年第一部隊に入隊したばかりの新人、御子柴笑太だった。
「ぜぇっはぁっ…っ…な、何が殺さないで~だよッ」
「い、いや。こっちの話……って何どしたの?そんな格好で…。」
「…かっこう?」
予想だにしなかった質問に小首を傾げる青年。
普段の彼は、
どんな時でも潔癖症か?と言う程にキッチリと隊服を着込むタイプ。
生真面目…
ストイック…
そんな言葉が似合う男だった。
「……?…」
俺の言葉の意図に気付いたのか、無表情で自分の姿を省みる。
Yシャツ1枚にズボンとブーツ。
露になった胸元。
微かに上気した白い肌が、Yシャツの隙間から覗く。
角度によってはヘソまで見えそうだ。
――あらら…随分剥かれたのね~
汗に張り付いた髪が、成熟途中の瑞々しい色気を煽る。
「珍しいねぇーそんな格好さ。色っぽいじゃ~ん。何してたのさ~ふふっ」
「…ッ!?…きっ…き、着替え中…だったんだ――ってソレヨリ!」
「ん?何?」
あたふたと焦る仕草をみせる新人隊員。
キラキラと目を輝かせて見詰め返すと、眉間に明らかな皺が刻まれた。
――ホント…面白い奴~
「コレを…お前に渡せって…。」
「?…誰からぁ?」
クシャクシャになったメモを受け取る。
ちょっと癖のある、大きめの字。
筆跡からすると、総隊長からのものだった。
「…あ。バレたのねー。…ぅんと、ナニナニ~?……」
相変わらず読みにくい字を追う。
文面に思わず笑いが込み上げた。
――はは~ん。なるほどねー。あの人…中々やるじゃん。
「…柏原?」
ニヤニヤと上がる口角に、御子柴が訝しげな顔で見詰めていた。
「あー。悪ぃな、パシリに使っちまって。総隊長に怒られちゃった~」
頭を掻きながら、苦笑を浮かべてみる。
すると、彼は当たり前だと言わんばかりに盛大な溜息をついた。
「フンッ…とにかく渡したぞ。俺は帰る。」
「あ。うん。お疲れ様ぁ~」
ドスドスと歩き去る後姿を見送る。
「…何かスゲー機嫌悪そうだな~。総隊長、何言ったんだぁ?」
…………。
ちょっとだけ考えてみる。
でもどうせ自分の利益にはならないと思い、素早く現実に思考を戻した。
「…ま、いっか。色々面白いもの見れたしー。」
反発しながらも、総隊長に寄り添う御子柴。
そんな御子柴に甘えながら、彼を守ろうとする総隊長。
「――ふふっ…かわいいなぁ~あの2人っ」
大体が…
調べたとしても、隊員の個人情報、他人に漏らす訳ないしねー。
表向き調べたって事にしておかないとさ。
あの総務課の女ウルセーし…。
――ごめんね新人君…あー、ナムナム…。
御子柴に心の中で手を合わせつつ、大きく伸びをする。
窓の外を見ると、夜明けを知らせる僅かな光。
「ぃよっし!週末は合コンッ合コーン~ッ!」
『報告書』
~調査完了~
報告者 御子柴笑太
思い返せば…
特刑に入ってからの俺の不幸の元凶は、アイツなんだと思う。
――いや…
アイツ 『ら』 だッ!!!
FIN.
PR
この記事にコメントする
■■ サイト案内図 ■■
■■ WEB拍手 ■■
現在準備ちゅう♥
ごめんね( ;∀;)