忍者ブログ
日陰の二次創作小説サイト。DOLLSで気ままに稼動中。
[76]  [73]  [70]  [69]  [67]  [66]  [65]  [64]  [63]  [61]  [56
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

御子柴受けアンソロジーpyrite様に投稿させて頂いていたお話のうちの一つです。
あちらのサイトが先月で公開終了となりましたので、作家個人での掲載となりました。
全二作ですので、後日2個目のお話をUP致します(●´ω`●)


先ず1個目のお話…『CHERRY BOY☆PANIC』(・∀・)
2個目に投稿したお話が余りにもシリアスだったので、こちらは完全コメディーにしてみました☆最初から最後まで悪乗りしかしてません(笑)
タイトルの通り、笑太をあえて可愛めな感じで表現しています(当社比w)
まさしく…嗚呼、青春!
甘酸っぱい印象の話にしたかったので、
楽しみながら気楽にお読み頂ければと思います(´▽`)
















調査報告書・・・










報告者 御子柴笑太






東都第三帝国

法務省 特別死刑執行刑務官部隊 第一部隊所属


思い返せば…
特刑に入ってからの俺の不幸の元凶は、アイツなんだと思う。
全てが終わってから気付いた事。
そう…後悔先に立たず。まさにソレだ。















■ CHERRY BOY☆PANIC ■

















×月11日 月曜日 時刻:0205



「――なっ?この通り!御願い!ホント頼むよ!!」

「…た、頼むって言われても……」


ひたすら俺に泣きついてくる男。
諜報課、柏原謙信。

夜間任務の呼び出しを受け、撤収後に唐突に言われた言葉だった。

「マジで!俺を助けると思ってさ。その女の子にスゲー頼まれてんだよ~ッ!!」

「頼まれたって…。俺には関係無いだろう?」

「関係大アリだよ!だって、あの総隊長と同じ部隊!仲も良い!」

これで関係無いって酷くなーい?…などとほざき出す。

女と『関係無い』の意味なんだが…。
そう心の中で呟く。

「たださ。ちょ~っとだけ、総隊長の事調べてくれるだけでいいからさっ」

「…調べる…」

「そそ。好きな奴居るのかーとか。普段の行動はどうなのかーとか。」

「普段の、行動…」

「うんうん!普段こんな癖が有る~とかさっ」

普段と言われて思いつくのは。
到底、口が裂けても他人には言えないような事ばかりだ。

それを言えというのか?

「…ぁ…ぃゃ…俺…普段とかはよく、知らねーし……」

「じゃあじゃあ!好きな奴居るのか。好みのタイプは~とか。それでいいからさ!」

「…はぁ…」

背後のドアを振り返る。
時生も帰ったし…正直、俺も帰りたい。
つーか、この場から逃げたい。

「マジで頼むよぉお!!じゃないと俺、仕事出来ないぃーッ!!」

俺の隊服に必死に縋り付いてくる男。
捨てられた子犬のような姿に、無意識に溜息が出た。

「…~~っ……解った。解ったよ…だから離せ。」

「ほぁッ!…マジィッ!?あああぁありがとぉぉぉお~!!」

「あー解ったから…。離 れ ろっ て…。うわ!隊服で鼻をかむなーッ!」

「あぁぁ~救世主様ぁぁぁ~ッ」

「…だ か ら 離せってーッ!」




…そんな訳で――。


俺の前途多難な 『時生観察生活』 が、華々しくも幕を開けた。










×月12日 火曜日 時刻:1625



「…笑太!伏せろッ!」

「…ッ!」

咄嗟に膝を折ると、先程まで頭の有った位置へ金属片が飛んで来た。
コンクリートに弾かれるコンバットナイフ。

「うげ~あっぶねぇー!笑太気を付けてよ~」

「…、…悪ぃ…。」

ちょっと考え事をしていた…何て言える筈もなく…。
俺の横に来た時生が、跪いた俺に手を差し伸べてきた。

「…体、しんどいの?後は俺やるよ~?」

微笑むアイツの顔。
穏やかに細められる瞳。男然とした精悍な顔つき。

「……。」


「…?…笑太?」

「…っ…あ。いや、大丈夫だ。悪い。」

伸べられた手を断り立ち上がる。
靴底の砂利が乾いた音を立てた。

その様子を無言で見詰めていたアイツが、突然声を上げる。

「よし解った!」

「は?…な、何が?」

脈絡のない突然の発言。
コイツの癖の一つだ。
思わず聞き返す俺を見て、時生はニコリと微笑みを返した。


  「 ""こちら総隊長。車内本部どうぞー。"" 」


「ッ!?……ア、アンタ!何をする気だ。俺はッ…」

慌てて通信を始めた時生の腕を掴む。
するとアイツは、宥めるように俺の頭をふわりと撫でた。

「…ッ!…お、おい!」


  「 ""……あぁ。うんそう、チェンジで。…っんなの解ってるよ!あぁ宜しく。"" 」


通信を終え、必死に隊服を握る俺を見て穏やかに苦笑する。

「…俺は動ける!大丈夫だって言ってるだろッ!」

「……解ってるよ…」

「――それならッ!」

「…でもね…。笑太が気もそぞろ状態では、俺は援護しきれない。」

「…ッ!……」

注意力散漫な今日の俺。
コイツは、最初から気付いていたんだ…。

「そんな訳で~笑太は俺の援護に回ってもらえるかな?」

そう言って、優しく微笑んだ。

「…ッ……わ、かった…。すまない…」

自己嫌悪と悔しさに口唇を噛み締める。
アイツの隊服を掴んでいた事を思い出し、静かに手を外した。

俺が俯いているのでアイツの顔はよく見えないが、雰囲気でアイツが笑っている気がした。

大きな手の平が、ポンポンと俺の頭を叩く。
子どもにするような仕草に再び悔しさが込み上げた。

「…っ…」


変に優しい所。
俺に甘過ぎる所。


「じゃあ~行こっかッ」


マイペースな所。
でも、寂しがり屋な所。
キレると残酷なまでに好戦的な所。
一般的ルールには縛られない癖に、仕事は徹底している所。

自分から檻に入るライオンみたいな奴。


それが…俺が見るいつもの桜澤時生だ。


じゃあ――
女が見るアイツの姿は?






×月13日 水曜日 時刻:1312



任務の打ち合わせを終え、昼食を摂る為に食堂へ向かう。
すると、廊下の一角に長い金髪が見えた。

――時生だ。

アイツは、一点を凝視しながら何やら真剣な面持ちで悩んでいるようだった。
普段余り見る事のない、眉間の深い皺。
何をそんなに?と思いその視線を辿ると…

ジュースの自動販売機。


「……っ…」

…そ、そんな事で…。

出そうになる溜息をグッと堪える。
俺が見掛けてから数分経った頃、
アイツは、ようやく握り締めていた小銭を自販機へと入れた。
ボタンを押し、ジュースが転がり出る。
手に取った物は…オレンジジュースだった。

…解ってたけど…解ってたけど…マジで頭悪いなアンタ…。

悩んだ結果がソレかよ。と、頭を抱えてその場に座り込みそうになる。
それもグッと堪え、再び視線を戻した。

いつの間にか煙草に火を付け、近くの壁に寄り掛かっているアイツ。
美味そうに紫煙を吐き出した。

何処か遠くを見詰めるような、先の視えない銀灰色の瞳。
普段、俺の前に居る時はクルクル変わるその表情も、
今は動く事なく仮面のように虚ろな表情で窓の外を眺めていた。

口唇に宛てた煙草から、か細い煙が立ち昇る。


「桜澤総隊長~っ」


静寂を壊す女の声。
制服からして、総務課かどこかの事務員のようだ。

それに気付いたアイツは、ふわりと流れる仕草で振り返る。
無表情のまま応対するのかと思いきや、よく見ると口元に微笑み。

瞳は硝子玉のように光り、薄い口唇が淡い弧を描く。
視線は相手を捉えていながら、そこに存在を認めていないような…

――空っぽな笑顔。

俺に対してのとは明らかに違う。
今迄感じた事のない違和感を感じる。

でも、この笑い方――以前、何処かで見たような…?

「………」

答えの出ない疑問を収め、現実に意識を戻すと…
女は、頬を染めつつ嬉しそうにアイツと話していた。
それに対して時生は、書類を受け取りながら時折わざとらしく瞳を細める。
さも優しげに、さも愛しげに…。

「…、…」

金髪に翳る切れ長の瞳。
色素の薄い長い睫毛。
整った鼻梁。彫りの深い男らしい顔立ち。

戦闘に身を置く者特有の屈強な筋肉が、スラリとした長身を鮮やかに引き立てる。

確かに外見は悪くない。
性格も、まぁ…見ようによっては爽やか?だし…。
それに加えて
特刑全48部隊の『頂点』に君臨し続ける男だ。


――そりゃ…モテない筈が無い、か。






×月14日 木曜日 時刻:2145



夜間任務出立前。
トイレで用を足し手を洗う。
指が痺れる程の冷たい水が、緊張と興奮で散在した心を沈めてくれた。

備え付けの鏡を見る。
投影されたもう一人の自分を見詰めた。

俺の瞳。
光無く澱む、暗い青。

アイツは…銀灰、だったか…。


――頭を過ぎる 硝子玉の瞳。空虚な微笑み。

それでも…
あの女はとても嬉しそうだった。

あんな笑顔をする男で、女は満足なのか?
顔?
身体?
金?
地位と名誉?
それらが、女達が求める時生への理想の姿?

「…、…」


――解らない……。


小さく溜息を零すと、視界の端を白い物が掠めた。


「お。笑太じゃ~んっ」


独特の媚びを含んだような…甘く響く低音。
これから任務を共にする男。桜澤時生だった。

鏡越しに見詰める俺の背後を通り抜ける。

「笑太もトイレかぁ~?任務前はちゃんと済ましとかないとね~」

独り言のように呟き、長い髪を靡かせてトイレへと向かって行った。
そんなアイツを見送りながら、持っていたハンカチで素早く手を拭う。
そして、便器の前でズボンに手を掛けているアイツに声を掛けた。

「……先に、行ってる。」

「っ!」

すると、アイツは慌てたように…

「えッちょっと待っててよぉ~俺ハンカチ持ってないし~」

尖らせた口唇。
母親を引き止める子どものように駄々を捏ねる。

小学生かアンタは…いや、今時小学生でもそんな事は言わないか。
ハンカチくらい自分で何とかしろよ。
つーか、外で拭いてもいいだろう…。

「…、…」

一つ息を吐き出し、扉の取っ手を掴んでいた手を下ろす。
俺の所作に了解を得たとみたのか、アイツは無邪気な笑顔を浮かべた。

再びズボンのジッパーを下ろし始める。
沈黙の中、チリチリと金属の擦れる音が響いた。

「……」

「……」

余りにも静か過ぎる空間に、何となく居心地が悪い。
壁に寄り掛かる体の位置を変えてみた。

「…どうしたのぉ~笑太?」

「……別に。」

「んん~?もしや俺の…『デザートイーグル』でも見たくなったぁ?」

「…デッ!?」

あえて逸らしていた筈の視線を向ける。
アイツは挑発的な笑みを浮かべ、俺を見詰めていた。

「…バ、バカかアンタッ!!」

「…ふふっ…笑太溜まってるんでしょう?任務終わったらエッチしよっか~」

俺の罵声などまるで聞いていないとでも言うように、笑みを深くする。
アイツの銀の瞳が嬉々として輝いていた。

その姿を見て
ふと、先程考えていた虚ろな微笑みを思い出す。


――あ。そっか…

あの空っぽの笑顔は 俺が第一部隊に入ったばかりの――。


記憶と疑問が合致する。
ちょっとスッキリした感じがするが、現実のアイツは尚も言葉を続けた。

「前にヤったのが結構前だもんね~久々にヤろうよぉ~っ」

懲りない俺のセクハラ上司。
こんな奴を好きになるなんて、 ゼ ッ タ イ 俺には理解出来ないッ!!


「…っんの……バッカヤロォォォオオッ!!」

「うぎゃ!!」

無防備なアイツのスネを蹴り飛ばし、勢い良くその場を後にした。


――やっぱりあんな奴…好きになるなんて理解できないッ!!






×月15日 金曜日 時刻:0123



「アンタ……湿布臭い…」


トイレでのセクハラの後。
任務完了した俺達は、控え室で報告書を作成していた。


「酷いよ~! 元はと言えば、笑太が蹴るからでしょお~」

「…元はと言えば、アンタが馬鹿な事を言うからだ。」

「う、うぅっ…」

しくしくと泣きながらパソコンを打つ時生。
白い隊服を纏った背中が、小さく小さくなっていく。
デカイ図体した大人が身体を丸めて泣く姿は、情けない事この上ない。

ホント…普通にしてればマトモなのにな……。


逞しく浮き上がった肩甲骨。広い肩幅。
内面とは全く正反対の後姿を見ながら、ふと柏原の言葉を思い出す。


 『…女の子にスゲー頼まれてんだよ~ッ!!』

 『…好きな奴居るのかーとか。』


「……」


アイツの好きな奴、か…。


――考えた事無かったな……


「しょ~たぁ~。手ぇ止まってるよ~」

「…ッ!?」

不意打ちの言葉に思わず身体がビクつく。

「…ぁ…わ、悪い…。」

「ぅんにゃ、いいよぉ~。こんな時間だもんねぇ~」

…とか言いながら、詮索する視線を感じる。
何となく顔を向ける事が出来なかった。

ジリジリとする頬を擦り、再び手元の書類へと目を向ける。


「……」

「……」


――いっその事 聞いてしまえばいいのか?


柏原から明確に口止めされている訳でもない。
アイツに秘密にしたい訳でもない。

でも――何故か躊躇われる。

知られたくない。聞きたくない。
それでも、考え始めてしまうと無性に気になる。


――そんな…矛盾した感情。


「…、…」

手の中の書類が乾いた音を立てる。
アイツが打ち込んだ文字を見て、ふと我に返った。

何故こんなにも、俺は躊躇っているんだ?


何故、こんなにもアイツを――…


「………アンタ…」

「?」

ギシリと椅子が回転する。
俺の呼びかけに、時生がゆらりと髪を靡かせ振り向いた。

「な~に?笑太」

微笑んでいるだろうアイツに顔を向けられず、ただただ瞳が空を泳ぐ。
たかが頼まれ事を尋ねるだけなのに…。

「…ぁ…ぃゃ…あの……アンタ って、さ……」

「…俺?」

「ぁ、あぁ…。」

「…俺が…何?」

「…っ……す……好きな…奴とか、ぃるのかなって――…」


「………は?」


ポカーンと開かれた口。
予想だにしない言葉に、アイツの目が限界まで見開いた。

「…えと…ぁの…。」

固まったままのアイツに声を掛けてみる。

緊張やら羞恥、自己嫌悪…
その他色々の感情で、胸がはち切れそうだ。
もうどうでもいい。今すぐにでもこの部屋を飛び出したい!


「居ないよ。」


常より1トーン落とした声色。
俯いた視界の端で、アイツが足を組み替えるのが見えた。

「……そ、そっか。居ない、か…。」

「うん。居な~い。」

予想通りのような、予想外のような――。
何となく納得出来ない複雑な心境。

俺の心を知ってか知らずか、アイツはおもむろに椅子を立ち上がった。

「?」

「……。」

いつに無く真剣な表情で、俺を見下ろすアイツ。
何を考えてるのか解らない瞳が不気味さを増した。
顔を上げてアイツの表情を伺うと、底光りする真摯な瞳。

「…ッ」

身体が無意識に後退する。
解っていた筈の危機に、本能がアラームを鳴らした。

「……」

「…ア、ンタ…?」」

すると、
アイツは座ったままの俺を包み込むように抱き寄せた。
隊服の白が俺の視界を塗り潰す。

「…な、にすんだよッ!」

離せ。と、目の前の肩を押す。

アイツの…次に言うだろう言葉。
それがどうしても聞きたくなくて、絡む腕を剥がそうと必死でもがく。

「…離せ、よ!」

「えー。続き…聞きたくないのぉ~?」

「…っ…、…」

首筋をくすぐる金色の髪。
柔らかい口唇の感触が、追い掛けるように肌を滑る。
恐怖のような興奮のような感情に、屈むアイツの隊服を掴んだ。
時生の長い指が俺のネクタイに掛かる。

「…ッ…ぁ…」

「…俺が愛してるのは、お前だよ。」

「…ッ!…」

顎を取られ上を向かされる。
飛び込んで来た光る灰色に目が釘付けになった。

「しかしまぁ…いったい何を言うのかと思ったらさ~今更こんな事とはねぇ…。」

穏やかに煌く瞳の奥底に、微かに揺れる苦渋の影。
その影に、何故か感じる罪悪感が頭を擡げた。

Yシャツの隙間に潜り込んできたアイツの指が、胸の突起を撫で回す。

「…、……んっ…」

「何度も何度もヒトツになったのにさ。それだけじゃ…笑太は足りないの?」

お互いの鼻先が触れ合う。
視線を外す事を許されず、顎を掴まれたまま悲しげに曇る灰色を見詰め続けた。

「…くぅっ……ゃ、め…」


怖い。

――何が?

認めてしまうのが。

――何を?


…何をだろう…解らない。

でも


――凄く…怖い――…


 「――お、俺はっ…柏、原にッ……!」


「柏…原?」

胸を愛撫する手が止まる。
瞬間、何かを思い出すように淡色の瞳が揺れた。

「…ははぁ~なるほどねぇ。今度は笑太かー。」

「は?…どういう意味だよ?」

くくっと喉の奥で笑うアイツ。
しかし、
その表情は笑顔とは程遠い、何かを策謀するような秘めた口元。
口唇が弧に歪む。

「その調査…どっかの女が、柏原に依頼したんだろ?」

「あ、あぁ…。」

「アイツは、その女と会う口実を取り付ける為、笑太に頼んだ…」

「し、知ってたのかッ?」

「知ってるも何も…いつもの事だも~ん。」

「い、つも…」

「そそ。でもその女は、俺のことが好きなんでしょう?無駄な努力だよねぇ~」

「……」

アハハと呆れ気味に笑うアイツ。
再び途方にくれる俺を見返すと、銀灰色の月の瞳が俺を射抜いた。

「俺はさ…。他の奴なんて興味無いしどうでもいい。」

「…っ…」

注がれる想い。
理解不能の恐怖が、再び心に大きな染みを作っていく。


「――でもね。笑太……」


言うな。
言うなよ。


「…俺は――…」

その先を…


――言うなッ!――…



「お前だけを愛してる。」


「……ッ!…」


耐え切れず見下ろすアイツの袖を掴んだ。

「…笑太じゃなきゃ勃たないよ…」

「…っ……、…変態…。」

「うわー酷ッ…」

近付く月の瞳。
優美に細められた目元が、クスクスと笑みを零した。
アイツの口唇が、優しく俺のそれを撫でる。

「…ッ……んっ、く…」

触れる程度の口唇とは対照的に、強引に入り込む舌。
ぐるりと口内を蹂躙すると、あっけなく移動し顎を辿る。

ぬめる感触に、身体が、肌が、うち震えた。
熱い吐息が抑えられない。

「…ん…ぁっ、は……んぅ…」

「…俺を…こんなにしといてさ…」

首筋を舐め上げ、柔らかく肌に吸い付く。

「ホントに酷いね…笑太は――…」

囁きながら、耳朶に舌を絡ませる。
その滴るような響きに…

「……と……きぉっ……」

――俺はただ、身体を捩じらせる事しか出来なかった。










×月15日 金曜日 時刻:0430



何処までも続く長い廊下。
暗い夜闇。
そんな中、一つだけドアの隙間を掻い潜り煌々とした光が漏れる部屋。

諜報課のとある一室…。


「…さってと~…次の任務候補はーっと…。」


背後に積まれた書類を確認する。
勢い良く立ち上がると、椅子が鈍い金属音を上げた。
それと同時になだれ落ちる紙。紙。紙…。

「あぁー。いい加減ココもかたさないとなー。」

手にした幾重もの書類の束。
得た情報を、パソコンに入れるのも面倒なほど。
ふと、
この書類の束って凶器になるんじゃないか?とか連想してみた。

「………恐ろしいな紙。」


 「……ぁ…ぁぁあ…ッ!」


「ん?」

 「…わぁぁあぁ…らぁあああああ…ッ!」

「何だぁ?」

床を揺るがす地響き。
書類がうず高く積まれた壁越しでも雄叫びが耳に届く。


「………か、怪 獣 ??……」


――って。
んな訳無いだろうけどさ~場所柄、ちゃんと確認しないとね…。

恐る恐る、ドアノブに手を掛ける。


「…柏ぁぁあ原ぁぁぁあああああああッ!!!!」


「ギャァアアアアッ!!!」


諜報課のドアの前。
突如として現れた怪物に、思わずその場に蹲る。

「…止めて殺さないでぇッ!…って――何だ。新人君か~良かったぁ…」

未知の生物かと思っていた奴は、
今年第一部隊に入隊したばかりの新人、御子柴笑太だった。

「ぜぇっはぁっ…っ…な、何が殺さないで~だよッ」

「い、いや。こっちの話……って何どしたの?そんな格好で…。」

「…かっこう?」

予想だにしなかった質問に小首を傾げる青年。

普段の彼は、
どんな時でも潔癖症か?と言う程にキッチリと隊服を着込むタイプ。
生真面目…
ストイック…

そんな言葉が似合う男だった。

「……?…」

俺の言葉の意図に気付いたのか、無表情で自分の姿を省みる。

Yシャツ1枚にズボンとブーツ。

露になった胸元。
微かに上気した白い肌が、Yシャツの隙間から覗く。
角度によってはヘソまで見えそうだ。

――あらら…随分剥かれたのね~

汗に張り付いた髪が、成熟途中の瑞々しい色気を煽る。

「珍しいねぇーそんな格好さ。色っぽいじゃ~ん。何してたのさ~ふふっ」

「…ッ!?…きっ…き、着替え中…だったんだ――ってソレヨリ!」

「ん?何?」

あたふたと焦る仕草をみせる新人隊員。
キラキラと目を輝かせて見詰め返すと、眉間に明らかな皺が刻まれた。

――ホント…面白い奴~


「コレを…お前に渡せって…。」

「?…誰からぁ?」

クシャクシャになったメモを受け取る。
ちょっと癖のある、大きめの字。
筆跡からすると、総隊長からのものだった。

「…あ。バレたのねー。…ぅんと、ナニナニ~?……」

相変わらず読みにくい字を追う。
文面に思わず笑いが込み上げた。

――はは~ん。なるほどねー。あの人…中々やるじゃん。


「…柏原?」

ニヤニヤと上がる口角に、御子柴が訝しげな顔で見詰めていた。

「あー。悪ぃな、パシリに使っちまって。総隊長に怒られちゃった~」

頭を掻きながら、苦笑を浮かべてみる。
すると、彼は当たり前だと言わんばかりに盛大な溜息をついた。

「フンッ…とにかく渡したぞ。俺は帰る。」

「あ。うん。お疲れ様ぁ~」

ドスドスと歩き去る後姿を見送る。

「…何かスゲー機嫌悪そうだな~。総隊長、何言ったんだぁ?」

…………。

ちょっとだけ考えてみる。
でもどうせ自分の利益にはならないと思い、素早く現実に思考を戻した。

「…ま、いっか。色々面白いもの見れたしー。」


反発しながらも、総隊長に寄り添う御子柴。
そんな御子柴に甘えながら、彼を守ろうとする総隊長。


「――ふふっ…かわいいなぁ~あの2人っ」


大体が…

調べたとしても、隊員の個人情報、他人に漏らす訳ないしねー。
表向き調べたって事にしておかないとさ。
あの総務課の女ウルセーし…。

――ごめんね新人君…あー、ナムナム…。


御子柴に心の中で手を合わせつつ、大きく伸びをする。
窓の外を見ると、夜明けを知らせる僅かな光。

「ぃよっし!週末は合コンッ合コーン~ッ!」










『報告書』




~調査完了~

報告者 御子柴笑太





思い返せば…
特刑に入ってからの俺の不幸の元凶は、アイツなんだと思う。

――いや…


アイツ 『ら』 だッ!!!










FIN.


PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
■■ WEB拍手 ■■
現在準備ちゅう♥ ごめんね( ;∀;)
■■ 何でもメ~ル ■■
■■ プロフィール ■■
HN:
性別:
非公開
趣味:
文字書き。
自己紹介:
コメント・メール頂けると嬉しいです☆
 

Designed by 日暮紅葉
PHOTO by 有毒ユートピアン

忍者ブログ [PR]